「今日の夜でもいいからメール、してやって」
「うーんー…分かった」
あんま乗り気じゃなかったけど、もっと輝くんの話ができるかも。
そう思ったら琢也とのメールも悪くないかな。
だから念のため、あたしも琢也のアドレスと番号を登録しておいた。
「あっ!琢也くんから返信きたっ!」
高い声を出して後ろの席のあたしを振り向く栞。
ピンク色の携帯を両手でしっかり握りしめ、あたしの目の前に画面を差し出す。
─────────────
To:琢也くん
Sub:Re
こちらこそよろしく!
比呂の幼なじみ?
ごめんけど
よう顔が思い浮かばへんから
今度1度、会おうか?
─────────────
「会おうだって、会おうだってぇぇ!」
「よ、よかったじゃん」
「やばいっ!いつ会おう?」
「んー…、放課後でもいいんじゃない?」
「そっか!──………放課後っと」
可愛らしい手先で器用に本文を作っていく。
本当に放課後に会うと決めたらしく、ぱっぱと文字を打ち出した。
その横顔が、恋する乙女モード炸裂していて気付いたときには、口を開いていたあたし。
「栞って、琢也狙ってるの?」
「んーん。彼氏いるもん」
「あ、そっか。狙ってるんじゃないんだ」
「うん♪」
携帯から目を離さない栞に素朴な質問をぶつける。
けど、なんてあっさりなお返事だこと……。
………───っていうか、
「えっ!? 栞っ、彼氏いたのっっ!? 」
「もっちろん!
「うそ……」
「心結、知らなかったの?」
知らなかった…………。
か、彼氏………
知らなかったよおお──…。
少しショックを受けるあたしの前で
「送信っ♪」
という栞の女の子らしい声が聞こえた。

