それから、もうすぐチャイムが鳴りそうだからといって、琢也は自分のクラスへ戻っていく。
あたしにとって、かなり羨ましいクラスへ帰っていく琢也の後ろ姿を見送りながら、今更だけど自分のお弁当箱を鞄へ放り込んだ。
「すごいね心結ちゃん。あっという間に琢也とも仲良くなったじゃん」
「うん!琢也、すごい!あたしの考えてること、よく分かってる!」
「それ、あれでしょ?輝限定の話でしょ?」
「んー……まぁねっ」
「…………さすが心結ちゃん」
苦笑いした比呂に、苦笑いして返すあたし。
それと同時にさっき帰ってきたらしい栞が、こちらを振り向いて
「さっきの子、誰?」
と聞いてくる。
なんとなく、栞の瞳がギラギラ光って見えるのは、気のせいだろうか……。
「輝くんと同じクラスだって。琢也っていう人」
「タクヤ?」
「うん、らしい。あたし今日初めて話したからよく知らなーい。比呂が仲良いんだよね?」
「まぁな。なんか、たまたま同じタイミングでトイレに逃げ込んで……そしたら友達なっちゃった」
「え?」
「何?“逃げ込んで……”って」
「あぁ、………入学式」
頭をポリポリ掻いて爽やかにハニかむ比呂。
そんな比呂とは対照的に、あたしたち2人はぽかんと口を開けていて
「あんた本ッ当にバカじゃないのっ!?」
「だからかー。どおりで式の時、比呂見当たらなかったもん」
あたしの言葉はもちろん後者のほうで
栞は結構キレたらしく可愛い顔しつつ、比呂に対して暴言を吐き散らしていました。

