隣の部屋から出できたのは、あの輝くんで……。
「ひひひひ輝くんっ、こここの部屋なの?」
「……なんで俺の名前知ってんだよ」
「え?」
まさかの質問返し。
一瞬戸惑って、輝くんの顔を眺めていた。
そして、我にかえったように「比呂が教えて……」と答えると、あからさまに眉間にしわを寄せる。
「あの野郎……」
そう確かに口にし、開けた部屋の扉を閉めた輝くん。
パタンと閉まった扉には、2070のプレートが。
「あ」
「あ?」
「おめでとう輝くん!……ゾ・ロ・目!」
首だけであたしが指差したそのプレートを見、顔をこちらに戻して
「バカじゃねえの?」
大きな瞳を細めて、冷たく吐いた。
輝くんはそのままそこを立ち去ろうと、エレベーターがある廊下の突き当たりへときびすを返す。
あ、行っちゃう……と察したあたしは
「輝くんっ、あの…」
呼び止めていた。
今日学校で、シカトはしないと約束してくれた通り、輝くんは簡単にこちらを振り向いてくれた。
それが嬉しくて、ホッと何かが綻んだ気がする。

