「みぃーゆうぅぅー!」
人混みを掻き分けて、羽奈ちゃんがあたしの名を呼ぶ声が聞こえた。
よいしょっとあたしの目の前で腰に手をあて、深呼吸をする。
あの最前列…
相当、大変だったんだ……。
羽奈ちゃんに感謝感謝。
「ごめんね。1人でいかせて。大変だったでしょ?」
「大変ってもんじゃないよっ。あそこはやばい。心結は行かなくて正解だったわ…」
その言葉の真意は、あえて追求しないでおいて…。
大事な報告を羽奈ちゃんから聞かなきゃ。
「羽奈ちゃん、ところでクラス…どうなってた?」
「ああ…クラスね」
羽奈ちゃんの口から出てくる言葉に胸がドキドキする。
羽奈ちゃんと一緒かな?
それとも離れるかな?
「心結はA組だったよ」
「A組………。は、羽奈ちゃんは?」
「ウチ?ウチは…………」
「羽奈ちゃんは………?」
「でいー」
「……………………でいー!?」
口が塞がらない、とはこのことだ。
羽奈ちゃんは、でい?
でいってABCD…のD?
「あたしと羽奈ちゃん、違うクラスなの?」
「そうだよ?」
「3つも離れちゃったのー?」
「だから、そうだよって言ってるでしょ?」
怒ってるのは冗談だと分かっていながらも、フリをする羽奈ちゃんにはこれ以上、何も言えない。
離れたものはしょうがない。
羽奈ちゃんは、そういう思想の持ち主だ。
あたしは渋々その現実を受け入れる。
自然と顔が下向きに下がっていくのが自分でもわかった。
口元が上がらないよ。
羽奈ちゃんはそんなあたしの頭を、ポンポンと撫でて
「とりあえず、教室行こう?」
優しく声を掛けてくれた。

