「………じゃぁ心結。うちらはここで…」
言いにくそうな顔して、開いたエレベーターのドアを飛び越えた羽奈ちゃんと栞。
「ずるいよ、ずるいよ!2人してっ!」
「もう、わがまま言わないの!あとで自分の荷物整理が終わったら、心結のとこ遊びいってあげるから」
「ええ?本当?」
「本当本当。メールするから大人しく片付けしといてよ?」
「栞もいくからねー!」
羽奈ちゃんの言葉に勇気付けられた気がした。
呆れ顔の羽奈ちゃんだったけど、最後に見せた笑顔は、やっぱり優しい。
さっきまであった消極的な気持ちは一気に排除される。
栞が言ったように隣の部屋の人と友達になれるかもしれない。
5階の人、みーんなと仲良くなれるかもしれない。
そい考えたら、羽奈ちゃんや栞がいなくてもやっていけそうな自信が沸き上がる。
さっきまで、何にぐだぐだ言っていたのか分からなくなるほど、元気は挽回していた。
─────チン
エレベーターが5階に着いたことを知らせる。
静かにドアが開かれると同時に、目の前にはビジネスホテルのような廊下が広がった。
靴で歩いていいものか、確認したくなるほどの綺麗なじゅうたん。
壁紙も、本格的な壁紙で高級感が溢れかえっている。
決してセレブが泊まるようなところのような一目置くような雰囲気ではないところがない。
そうやって気取った感がないから、あたしたちでも気楽に使用できる仕組みになっているんじゃないのかな?
エレベーターを降り、さっきフロントで受け取った紙を開く。
あたしは……『2071号』
惜しい……。
あと1こでゾロ目だったのに…。
恐る恐るながらも、ふわふわのじゅうたんを浮き立つ足で歩む。
部屋の扉の番号をチラチラ見比べながら自分の部屋を探すあたし。
…………2071…2071。
そう心の中で呟きながらもやっと見つけた部屋は、廊下の突き当たりにある、1番端の部屋だった。

