───あたし、當間心結(とうまみゆう)




南第三中学校からは友達の羽奈ちゃんと2人きりの進学をした純心学園を目の前に胸を膨らませている。


心結って変わった漢字だねってよく言われるんだ。




好きな食べ物は甘いもの。
嫌いな食べ物は苦いもの。




羽奈ちゃんのことはあたしが1番よく分かってるつもり。


だけど羽奈ちゃんは分からない。

あたしのこと分かってくれてるのかな?




あたしは、分かってくれてることを信じて今日も一緒にクラス表を見に行きます。












ごっちゃごちゃのクラス表の周り。


あたしと羽奈ちゃんは、一番後ろでジャンプする。


どんぐりの背比べとも言える、あたしと羽奈ちゃんの背丈は、ジャンプしても表の端っこさえも見えない。


不利な身柄のせいで、懸命になって探そうとする気力が萎えてくる。





「もう、これじゃ埒あかないから、ウチ潜りこんでくる。心結はここで待ってて」


「えっ!?嘘でしょ?羽奈ちゃんー!?」





力強いその声と共に羽奈ちゃんは、人の群れに入り込んでった。



呼び止めた時には既に遅く、返事は返ってこなかった。

ぼーっと立たずむあたし。

何もすることがなくなった。







しかも何分たっても人の密度は減らず、羽奈ちゃんも帰ってこず……。


暇を持て余す時間が少し寂しくなってきて。










ふと顔を上げるとさくらの花びらが奇麗に降っていた。

何枚も何枚も、人の手では作れないこの描写にあたしは目が離せなってしまう。




無意識に右手を、舞い散るそれをすくおうとゆっくり伸ばした。

ひらひらと手の平に乗った花びらは、あたしの手で休むことなく、北風に吹かれどこかへ飛ばされていく。




その行方を追おうともせずに、あたしはまた違う花びらを手の平に乗せる。






そんなことをしながら、羽奈ちゃんを待ち続けた。