「……………」
本気で引いていた。
さっきまで初対面のあたしに、きちんとした対応で接していたけど……。
「……あの」
「うぜぇ」
今では、冷酷な目付きであたしを見下ろしていた。
そのむごさに一瞬、身を引いてしまう。
「一目惚れ?俺に?」
「………はい」
そう言って微かにせせら笑う彼。
少し見えた白い歯が目についた。
「俺なんかにそんなの、しないほうがいいぜ」
「な、なんで…?」
「別に何でもいいだろ」
髪の毛を掻き上げ、じゃあな、と吐き捨てた。
そして、その場から立ち去ろうときびすを返した彼。
………………。
確かに勝手に一目惚れされて、好きだなんて言われて、うざいかもしれない。
あたしがもしその立場だったら、彼のように考えていたかもしれない。
だけど
「待ってっ!」
「うわっ!何だよ、てめぇ」
前方に見据えていた彼の腕を、後ろから勢いよく捕まえる。
ぎゅっと両腕を絡み付けたあたしは、彼が逃げないように強く力を入れた。
「その………勝手に惚れて、すいませんって思ってます」
「だから何だよ」
「でも、嫌わないでっ」
しがみつく思いだった。
「ずっとそんな態度で接してもらってもいい」
「……」
「だけど、嫌わないで。無視したりしないでほしいの」

