「え?」
驚いた顔で、あたしを見下ろす彼。
「あたしの名前。當間心結!」
声を失っているであろう彼は、口をぽかんと開けている。
周りの目なんて気にしない。
自然と彼の腕をつかむ手に力がこもった。
「……何。どうしたの?」
「あたしの名前記憶して」
「は?」
「當間心結なの!」
「わ、分かったから…」
汗マークがついてそうな表情で、あたしの肩に優しく手をついた。
その優しい仕草もただただ、きゅんと心臓に刺激を与えるだけ。
あたしの勢いはとまれなかった。
「好きなんです!」
「………は?」
「一目惚れです!」
「え?意味分かんねぇんだけど」
「意味分かる!」
「いや、分かんねぇし。…何、好きだから付き合って、とか?」
「ううん。名前覚えるだけでいい」
「はい?」
「それだけで十分!」
彼は完全に引いていた。

