「どしたの?心結ちゃん」
比呂が、あたしの顔を覗き込みながら心配そうな表情を見せた。
栞も比呂と一緒になって、あたしに事情を吐くよう促す。
「ちょっと、人を探してて」
銀の話なんか全くきいてない。
うるさい銀の声にかき消されそうなあたしの言葉を、2人は必死で聞き取ろうとしていた。
「探してる人って?」
「まさか好きな人とか?」
「……………………………そのまさか」
比呂に続いた栞の鋭い答えに、あたしは恥ずかしげに頷いた。
「えー!心結ちゃん好きな人いたの?」
「まじで?その人は、このクラスにいんだ?」
「いや、今日一目惚れしただけで、そこまで分かんない」
改めて口に出し、惚れたことを確信すると、本当に照れる。
今日初めて会って、今日初めて話した友達に早速、恋愛話するのもどうかと内心思ったけど。
この2人なら大丈夫だと思えた。
「一目惚れ?すげー。俺したことないしなー」
「あたしも初めてだよ」
「このクラスじゃないかもしれないんだ。探すのみじゃん?」
「うん。これが終わったら行ってみるつもり」
栞と比呂、2人して
──これが終わったら?
っていう顔を。
銀が大声で喋りまくる姿を確認してから、2人はあたしが言った言葉の意味を理解し
そして、笑った。

