私の実家は父の祖父の代から続く中華料理店を営んでいて、裕福ではなかったけど常連客もそれなりにいて、近所での評判も悪くはなかった。


その店の一人娘だった私が店の手伝いをさせられるのはよくあることで、不満を感じつつも他にやることもなかったし、一応おこずかいもくれていたからお客さんから見れば

『よく働くいい娘』

だったようで、昔から可愛がってもらったものだ。



常連さんの一人に父の父、私の祖父の友人であり近所に住む津田さんというおじいさんがいた。


まわりの大人は彼を
『津田じい』とか

『津田じーちゃん』とか


呼んでいて、私もそう呼んでよく懐いていた。


津田じいには息子も娘もいたけど、孫はいなくて、だから私を孫のように可愛がってくれた。


そして私も、津田じいは本当のおじいちゃんで、おばあちゃんは寝たきりだから別々に暮らしてるんだな。なんて勝手に思ってた。


津田じいは津田じいの家にいつもいるおばあちゃんと結婚してる。

真実を知ったのは…おばあちゃんが亡くなった時だったっけ。

小学校にあがるまで私と津田じいは血が繋がってると思い込んでた。

だから私が知ってる『おじいちゃん』は亡くなった父方の祖父でも何年かに一度しか会わない遠くに住む母方の祖父でもなく、津田じいだったんだ。