記憶のカケラ


お父さん、久しぶりに会いたかったのになぁ〜……。
けど、出張ってことは、お父さん元気でいるってことだよね…?よかったぁ……。

私はスイカをもうひとかじりすると、唯花の方に目を向けた。

そういや、唯花はもう中学1年生……かぁ…。

そう考えていた時。

……まてよ?
よく考えてみたら……。
中学生になったのは、唯花だけじゃない。
罫や、他の友達だって………。
……ってことは、卒業してないのって…………。

急に込み上げてきた不安。
私…私って……。

「卒業できるの…っ!??」

「……はい?」

私の口から急に出てきた“卒業”という言葉に、唯花は意味不な顔をしている。

「なに、急にどうしたの?」

「だってだって…、私だけ卒業してないよっ…!?」

「卒業って……学校のこと?それなら心配ないって。葵のお母さんが、ちゃんと中学いけるよう学校に頼んでくれてるからさ」

「えっ……?なんでそんなこと知って……」

最後まで言い終える前に、唯花は無言で廊下を指した。
その指の方向に視線を向けてみると……。
水やりを終えたお母さんが、今学校に電話をしている様子。

唯花ってば、耳よくなってる……。