あたしはニットのセーターとGパンを脱ぎ捨てた。


下着も放り投げると、12月の寒さが肌を刺す。


「着替え中だから入って来ないで!」


近づいてきた足音は、あたしの叫び声でピタッと止まった。


あたしは姿見に映った自分の身体を眺める。

まだ良ちゃんも誰も触っていない、あたしの白い身体と唇。


あたしは唇にそっと触れた。
男の人の唇ってどんな感触なんだろう。


身体ごとギュッと抱きしめられたら温もりを感じられるんだろうか。


あたしは一番お気に入りの真っ赤な下着を身に付けた。


良ちゃんと付き合い始めた時、「勝負下着」といって、舞子と買ったやつだ。

黒のストッキングにショートパンツをはいて、紫のニットに腕を通す。


大きめのセシルのバッグに一日分の下着と着替えをつめて、あたしは机の引き出しを開けた。


バイト代を貯めた10万円を掴んで財布にねじ込む。


少し迷ったけど、良ちゃんの写真の挟んである手帳もバッグに入れた。


準備はできた。


あたしはダウンを羽織って深呼吸をする。


ゆっくり息を吐き出して部屋のドアを開け放つ。


すぐに目をつり上げたお母さんと目が合った。