その鍵は、遼平のお兄さんが使っていた合い鍵だ。


あたしをボコして部屋を出る時、あたしが倒れているすきをみて、美弥は玄関の脇にかけてあった合い鍵を持っていったのだ。


「知らねえよお前なんか」

そう叫んで、美弥は遼平に鍵を投げつけた。


その時美弥は、もう肉食動物の顔はしていなかった。


黒く縁取られた瞳から大粒の涙を流して、美弥は泣いていた。