その白い人影は、傘をささずにゆっくりと歩いていた。


白いジャージの足の裾は、泥の混じった雪で茶色く汚れている。


「遼平!」


あたしは迷わずに彼の名前を呼んだ。



静かに前を歩いていた白い人影は、あたしの声に足を止めた。


そしてゆっくりとこちらを振り返る。


それは、間違いなく遼平だった。

雪を被って白く染まった金色の髪。
金色のラインの入った白いジャージ。
そして、舞い落ちる雪の中に浮かび上がる、それは綺麗な顔。


あたし達はしばらくの間見つめ合っていた。


5メートル程先にいる遼平の顔は、雪と夜の闇に紛れて表情がよく見えない。


ねぇ遼平、あたし遼平のことが好き。
また遼平に会いたかったの。

ねぇ、いつから公園にいたの?
寒かったでしょ?
ごめんね。


喉まで出掛かった言葉は、遼平を目の前にするともどかしいくらいに口に出すことが出来なかった。


一体どの位の時間、あたし達はそうしていたんだろう。


雪はただひたすらあたし達に降り注ぎ、静かに時だけが過ぎていく。


静寂を破ったのは、遼平の方だった。