「鮎川遼平ってゆうの。良ちゃんと同じ名前なんだ。
金髪で、顔中ピアスだらけなの。
クールで何考えてるのかよくわかんないやつだけど…
寂しがりやで、たまにすごく純粋な笑顔するんだ。
あたし遼平が好きなの。
遼平じゃなきゃ嫌なの」


「奈美ちゃん、何言ってるの?一体どうしちゃったの?」


なだめようとしたのか、良ちゃんはあたしの腕を引っ張って自分に引き寄せようとしてきた。


「離してってば」


あたしは力いっぱい腕を振って良ちゃんの手を振り払った。


良ちゃんの方には目をくれずにきびすを返すと、公園の出口に向かって走り出す。


あたしはすっかり忘れていた。
今からたったの5日前、その光景が叶わなかったことを。


「奈美ちゃん!ちょっと待ってよ!ねぇ!」


全速力で走るあたしの背後で、良ちゃんの声が暗闇に吸い込まれるように消えていった。



あたしはもう迷わない。

あたしの向かう道は、今見えた。

あとは遼平の元へ、ただ真っ直ぐ走ればいいんだ。