なんで気づかなかったんだろう。

遼平はずっとここにいた。


握りしめた煙草の箱は冷え切っていた。
遼平、いったいいつからここにいたの?

行かなきゃ。

遼平を追いかけなきゃ。


「ねぇ、ちょっと待ってよ。どうしちゃったの?」


走り出そうとしたあたしを止めたのは良ちゃんだった。


あたしを行かせまいとして、強く強く腕を掴んでいる。


「痛い。離してよ」


「急に血相変えてどこ行こうとしてるの?
俺に会いに来たんでしょ?」


「違うよ。あたしは遼平に会いに来た」


良ちゃんは怪訝な表情をしてあたしの顔を覗き込んだ。