「あたし、帰るね。」


そう言ってあたしはバッグを無造作に肩に掛けた。


良ちゃんのほうには目をくれず、あたしはゆっくり出口に向かって歩く。


ドラマのワンシーンみたいに堂々と。


うろたえた良ちゃんの顔が、一瞬目に映った。


アイフルのCMのチワワみたいで、おかしかった。


店をでて少し歩いて、あたしはまだ良ちゃんのいるはずのマクドナルドを振り返った。


追いかけてくる良ちゃんの手を振り払ってさっそうと去るシーンをイメージしてたのだ。


なのに…あいつ追いかけてきやがらない。



虚しさと切なさがジワジワ押し寄せてくる。


ボロボロ涙を流して泣きたかった。


映画の可哀想なヒロインみたいに。


でもあたしの目からはただの一滴の涙もつたっては来なかった。


なんか気分的に涙を流したかったのであくびを連発する案も思い浮かんだけど、アホくさいからやめることにした。



それはクリスマスの5日前の出来事。

冬休み初日の土曜日。

あたしは良ちゃんに振られた。