あたしはリョウヘイの腕にすっぽりと包まれた。


煙草の臭いの染み付いた真っ白なスウェットに顔を埋めると、味わったことのない安心感があたしを包み込んだ。


あたしは目を閉じた。


温もりの中で、優しい夢の中におちていける気がした。




どれくらいそうしていたんだろう。


ひっきりなしに鳴るチャイムの音であたしは我に返った。


扉を叩く音と、「アユ〜!アユ〜!」と女の人の叫び声が聞こえる。


「あ〜!うるせぇ〜!」


叫び声と共に、リョウヘイはガバッと布団から飛び起きた。


勢いよく部屋の扉を開け、スウェット姿のままドカドカ玄関に向かう。


「うるせえ!」


「おはよ〜アユ。やっと起きた?」


「今何時だと思ってんだよ」


「もう12時まわってるよ。しょうちゃんにきいた。昨日遅くまで飲んでたんでしょ」


扉の向こうでは、リョウヘイと親しげに話す女の人の声が聞こえる。


あたしは重い体を起こして部屋を見渡した。


ベッドとこたつと、テレビをおいたキャビンのあるだけのシンプルな部屋にあたしはいた。


枕元には白いジャージと、煙草と灰皿と、飲み干した缶ビールが置いてある。


玄関からは、リョウヘイと女の人の声が聞こえてきた。


「で、何の用?」


「なによその言い方は…
せっかく煮物持ってきたのに」


「まじか〜お前最高。わりいな」


「ちょっと調子良すぎなんだけどって…
………あれ、アユ女の子きてる?」


扉の向こうの女の人の声色が変わったのがわかった。