「俺…キ……キスとか初めてで……
違うんだ!俺からじゃなくて、結城さんのほうから…
いきなりで防ぎようなくてさ…俺驚いちゃって…」

そりゃそうだ。

奥手な良ちゃんの初めての彼女があたしで、そのあたしと4ヶ月もつき合っておきながら未だに手すら繋いでいない。



「まさかあの結城さんが俺と…生徒会で頭も良くて…」


あたしは見逃さなかった。

良ちゃんは口の端がヒクヒク上に上がるのを必死にこらえている。


才色兼備の結城広恵に誘われて、キスされた場面をはっきり思い出している。


死んじゃえ。


不祥事を起こした政治家さながらに、良ちゃんは弁解を並べていた。

聞く価値もない。

良ちゃんの言葉には耳を貸さず、あたしは勢いよく立ち上がった。


死んじゃえ。
良ちゃんも結城広恵も死んじゃえばいい。


プラスチックの固い椅子がガタガタッと音をたて、良ちゃんがビクッとあたしを見た。