あたしを取り巻く空気が変わったのが分かった。


「今なんつった?」


「なに、君リョウヘイの知り合い?」


何が起こっているのか、あたしにはもう全くわからなかった。
分かるのは、「リョウヘイ」という名前に、男達が異様に反応していること。

まさか、良ちゃんこの不良さん達と知り合いなの?


「ねぇリョウヘイこの子呼んだ?」


あたしを取り囲む男たちの後ろから、金髪の頭に真っ白のジャージを着た男があたしの前に出て来た。


真っ白のアディダスのジャージには、髪の色と同じ、キラキラ光るゴールドの三本ラインが入っている。


全然良ちゃんじゃないし。


リョウヘイと呼ばれた男のすわった目と視線が合った瞬間、あたしのこの場からの生還率は完全に絶望的なものになった。


「俺が呼んだぁ?」


少し赤みをおびた端正な顔があたしの顔にグッと近づいてくる。


吐息はかなりお酒臭い。


リョウヘイはあたしをしばらく見つめたかと思うと、いきなりあたしの肩を抱き抱えた。


「じゃあ俺帰るわ」


「まじかよ〜お前そうゆうのは早く言えよ。
ユウジもリョウヘイもよう、顔のいいやつは女が絶えねえからいいよなぁ」


「お前いつの間に新しい女作ったんだよ」


はやし立てる男たちに「じゃあな」と手を挙げ、金髪のリョウヘイはあたしを連れて行く。


あたしの顔はお酒と恐怖でほてり、足と頭はグルグル回っていた。


ただ金髪のリョウヘイのお酒とタバコの匂いだけが、あたしの脳にリアルに焼き付いていた。