いちえ




目の前には、瑠衣斗のスラリとした足が見える。


見えてる筈ないのに、視線が泳ぐ。


何言えばいいの?何言われるの?



どうする事もできない私を余所に、そのまま屈み込んで胡座をし、瑠衣斗が腰を下ろした。


「………」


「………」


「………」


「……?」



………あれ??



そのまま何も言わない瑠衣斗を不審に思い、目線だけで瑠衣斗を見上げた。


「……ごめん…」


「っ!?」


見上げた瑠衣斗は俯いたままなのに、私が目線を上げると同時に言葉を発した瑠衣斗に過剰に反応してしまった。


…み…見えてんの??



恐る恐るそのまま顔を上げたが、少し長い前髪によって瑠衣斗の表情は伺えない。


大きく高鳴ってしまった胸の鼓動を抑えようと、瞬きを繰り返してみた。



「…本当にゴメン」



痛みを堪えるような瑠衣斗の声に、りなさんの事をやっぱり言っているんだと気付く。


何か言わなきゃと思うのに、口にチャックでもしてしまったように口を開ける事ができない。


「泣いた…のか」


「泣い……雨に降られただけ」



一向に顔を上げない瑠衣斗は、何だか泣いているようにも見える。




何でそんな声出すの……?