いちえ




「…ももですが」


「ちょっと話したいんだけど」


「………」



簡単には諦めてくれる筈もなく、思わず口を閉じてしまう。



掴まれた腕が、何だか痛む。



「宗太、龍雅。悪いけどちょっと外してくんねえ?」



何も言わない私を余所に、瑠衣斗が二人に声を掛ける。


何だか本気の声に、ますます胸がどんよりと曇るようだ。


「へいへい。仲良くお喋りしろよ」


「女の子には優しくね〜♪」



呆気なく瑠衣斗に承諾してしまった宗太と龍雅が、腰を上げてしまった。


思わず引き止めたい衝動に駆られ、口を噤んだ。



どっちみち、早かれ遅かれこうなるには違いない。



それに瑠衣斗の性格を考えたら、やっぱり避けては通れないだろう。



これで確信した。

きっと、りなさんの話だ。



躊躇する事なく部屋を出て行ってしまった二人を見送り、ドアが閉められた。



しんとした沈黙が広がり、瑠衣斗を見る事もできない。



固まり続ける私に向かって、瑠衣斗が近付いてくる気配がし、更に身を固めた。



胸がドキドキと暴れて、息がつまりそう。

呼吸をするのも困難で、思わず手が震えそうになる。



俯く私の前が、陰る。



一際大きく反応した胸が、痛い程だった。