いちえ




開けられたドアの向こうから、聞き慣れた少し掠れたような低い声が聞こえた。


思わず胸がヒヤリとすると同時に、ドキッと胸が高鳴る。



「ちょっといいか?」


「……良くない」


「……………」


「……………」



嫌だ。今は何も聞きたくない。


お願いだからそっとしておいてよ……。




「がはは!!るぅちゃん嫌われちゃった〜♪」


「…なんだと」



龍雅のセリフに、素直に反応した瑠衣斗は、機嫌の悪さを現したような低い声で聞き返し、またドキリとする。



「るぅなんて大っ嫌いっ!!b〜yもも♪」


「その言い方ヤメテ!!」


「言い方だけかよっ」



呆気なく私まで龍雅に反応してしまい、宗太に突っ込まれてしまった。



嫌い…ではないけど、今はるぅと二人っきりで話なんてできないよ。


私は……何て言えばいい?



「…もも」



再び名前を呼ばれ、そっと瑠衣斗に視線を向けた。


何だか怒っているようにも、戸惑っているようにも見える瑠衣斗が、じっと私を見つめていた。