いちえ




ダボダボのスウェットから、指先が覗いている。


酷く冷えてしまっていた体は、ポカポカと熱を取り戻していた。



頭を拭いてくれる龍雅の手つきが気持ち良い。



「馴れてるね」


「俺を誰だと思ってんだよ〜」


「喋りすぎてモテない龍雅」



間違いねえ!!と笑う宗太を余所に、龍雅に頭をグーでグリグリされた。


瑠衣斗は、りなさんと話しているんじゃないか。

そう思うと、瑠衣斗に何を言われるか想像するだけで怖かった。


そんな気持ちを誤魔化すように、いたって普通にやり過ごした。



龍雅も宗太も、私が何故あんな場所で傘もささずに居たのか、何も聞こうとはしない。



ひょっとしたら、私を迎えに来る間にかかってきた瑠衣斗の電話によって、少しは事情を知っているのかもしれない。



「もも髪なげーよなあ〜」


「…そお?自分じゃよく分かんない」



だいぶ乾いてきた所で、龍雅は丁寧に髪をクシでといてくれる。



きっと、彼女の事を大切にするんだろうな。

でも喋りすぎて振られちゃうのかな。



なんて絶対言わないけど。



「…もも」