いちえ




じっと立ち尽くしたまま、全身で雨を受け止めていた。


宗太は電話を切らず、ずっと私に声をかけ続けてくれていた。



雨は弱まる事もなく、どんどんと強くなっていくようにも思える。


すっかり冷え切ってしまった体からは、熱がどんどん冷たい雨によって奪われていった。





「もも!!」



どれくらい時間が経っただろう。突然名前を呼ばれ、ゆっくりと視線を声のした方へと振り返った。



「………宗太…」



傘をさしたまま駆け寄って来る宗太が、滲んで見える。


きっと雨のせいだ。



「何やってんだよ!!」



頭上で、雨が弾ける音が鮮明に聞こえ、結構どころか相当雨が降っている事に初めて気が付いた。



「……散歩」


「…ならいい」



ポツリと言った私を、優しく宗太が抱き締めた。



「……濡れちゃうよ」


「乾かせばいい」



雨に混じって香る宗太の優しい香りに、私は安心して身を任せた。



「……風邪ひくよ」


「ももがな〜」



ごめんね。宗太までベタベタにしちゃって。


宗太はみんなに優しいね。