いちえ




再び鳴りだした呼び出し音に、ハッと意識を取り戻す。


頬に当たる雨が、強い風によって強く当たり、微かに痛みを感じる。



「――はい」


「おーす、今どこ?」



かけてきた相手も確認しないまま、携帯を無造作に耳に押し付けた。


「……外」


「…もも?」



ポツリと言う私に対して、宗太が不振に思ったように名前を呼ぶ。



雨とは違う、生暖かい液体が頬を伝った。



「外って雨降ってんじゃん。まだ帰ってねえのか?」


「………ぅ…が…」


「…ん?……る…ぅか?」



私は、何を言いたいのだろう。
何を宗太に聞いてほしいのだろう。



「今どこだ…?言えるか?」


「……駅…」



そう答えた私に、宗太はちょっと待てよ。と言って何かを叫んだ。


相手はどうやら龍雅らしく、本当に仲良しだなあ…なんて呑気に考えていた。



掴まれた腕が、今になって痛みだしてきた。


結構な力で握られていたせいか、腕に力を入れると痛みが走る。



思い出すと、体が震えだすようで、グッと思いとどまった。


「すぐ行く。待ってろ」