いちえ




分かっている。

りなさんは、るぅに振られて私にあたっているんだ。


いつも一緒に居た私に……。



分かっているのに、胸が張り裂けそうな程痛む。



もう何も聞きたくない。耳を塞いでしまいたい。



強い力に逆らえる筈もなく、虚しい程あっけなく腕を引っ張られてしまう。


「やめて!!ちょ、まじ帰るからっ」


「いいじゃ〜ん♪楽しい事あるよ〜」



先程までの、あからさまに私を傷つけようとする言葉とは逆に、何かを企んでいるようなりなさんの言葉に恐怖感を隠しきれない。



ズルズルと抵抗も虚しく、改札口とは逆に引きずられるように大通りまでやって来てしまった。


なんでこんな事になっちゃうの?



辺りを見渡しても、知り合いなんて誰一人居ない。



未だに笑い続ける二人は、私からは異様な光景に見えて仕方ない。


これからどうなるのか全く想像もできない分、悪い方へとしか考えられない。



グッと握りしめていた鞄から、聞き覚えのある着信音によって、一瞬掴まれた腕から力が抜けた。


「あっ!!おい待てよっ!!」


「ちょっと何してんの!?」



隙を狙って腕を勢い良く振り解くと、一目散に走り出していた。


鳴り続ける携帯を気にする事もなく、ただひたすらに走りつづけた。