いちえ




夏休みか……あとちょっとだなあ。



そして、あの日がやって来る。


美春のお母さんは、私に伝えたかったのかな。


私に、気付かせたかったのかな。



ずっと家族ぐるみで仲良しだったし、子供の話もするだろうけど…どんな話してたのかなぁ。



多分、両親の部屋を探せば、今日見た写真がそっくりそのままあるだろう。



いつからか、私は自分の部屋以外、生活する上で必要な場所以外には近付く事はなかった。



もちろん、家族が亡くなって、遺品の整理なんかもしていない。



何となく、入る事をずっとためらってきていた。



いつか入る日が来たら、それは私が家を手放す時だろう。







「っしゃー!!決定な〜♪てか、二人とも仲居さんのお友達いねぇの?ねぇ、ねぇ」


「居るんじゃねえ?知らねーけど」


慶兄のセリフに、しゅんと眉をしかめた龍雅が可笑しい。



本当に、ある意味龍雅の性格が羨ましいよ。



「俺も居ねえなあ〜」



そんな瑠衣斗の言葉に、あからさまに口をへの字にした龍雅に、もう呆れて笑うしかなかった。