いちえ




慶兄も…どう思っているのだろう。


私の気持ちに気付いているに違いないし、一緒に居ても辛いだけなんじゃないだろうか。



優しい笑顔が、私の心に罪と言う傷を深く刻むように痛む。



こんなに優しい人を、私は裏切っているんだ。


利用しているんだ………。




「あ〜っ、慣れねぇモン着ると肩いてえ…」



大きく左右で円を描くように振る瑠衣斗は、首を傾けてポキポキと鳴らす。



「夏希と純平はすごいね。慶兄も」


「あいつらは仕事だーかーら〜」



瑠衣斗はクシャッと前髪に指を通し、髪が少し乱れてしまった。


「我慢できない子だねえ」


「ガキ扱いすんな」



本当に、こんなやり取りをずっとしていきたい。


この関係を、崩したくはないんだ。


「さり気なく俺の事オヤジ扱いしてねぇか?」



近付いて言う慶兄に、一瞬ピクッと反応した瑠衣斗に笑いが漏れる。


「ち、ちげえよっ」



本当に慶兄には弱いなあ。


5つ上にお姉さんが居るって言っていたけど、やっぱり弱いのかな?



どんな家族なんだろう。



きっと、明るくて笑いの絶えない家族なんだろうな。



………いいな。