いちえ




「え〜?龍ちゃんに何しても無駄そお〜」


「…俊!!この毒舌嫁なんとかしてくれ!!」


「ま、美春の言う通りだな」



俊ちゃんまで味方には付いてくれず、龍雅は「このアホップルがー!!!!」なんて叫んでいる。



「口…縫ってやろうか?」


「え!?慶兄までそんな事言っちゃうワケ!?」



ギャアギャアと騒いでいるみんなを見ていると、このまま時間が止まればいいのに………なんて思う。



笑い声は、中庭を抜けて青空へと抜けるようだった。


どこまでも広がる青い空には雲一つない。



少し強い陽射しを太陽が放ち、夏も近いことを知らせているようだ。




もうすぐ、夏が来る。





眩しい季節は、私の記憶を見えなくしてしまう。



白く曇ったような、霧がかかったような、眩しすぎて見えないような……――――。






一瞬、誰かの顔が頭を掠めた。



忘れていた何かを思い出せそうな感覚に、胸がモヤモヤとする。



思い出せそうで、思い出せない。



何かが邪魔して、私の頭の中に壁を作っているようだ。




「おいもも、行くぞ」



空を見上げる私の視界に、突然誰かが視界を遮った。


逆光で暗くなり、一瞬分からなかった。


「ちょっと、何か地味にムカつく」


「え?だってイヤミだもん」


「るぅまじうっとーしい」




こんなやり取りも、いつまでもみんなとしていないな……。