いちえ




「はいはい、じゃ、いきまーす!!」


レンズを覗き込んだカメラマンが、片手で大きく手を振る。



目線を前に向けたと同時に、ふわりと甘くて爽やかな香りが鼻を掠めた。



すぐ近くまで顔を寄せた瑠衣斗に、グッと肩を組まれ、意味が分からず心臓が暴れ出す。


ってか慶兄後ろ居るんですけど!?


そう焦っている私の頭上に、ずしりと重みが加わる。



………何この状況。



「笑え笑え」


「ニッて。ほれほれ」



頭上と真横から掛けられる声に、思わず吹き出した。


「ちょっと…何これ」



「いてっ!!おい龍雅いてえよ」


「体重かけんなよ!!」


「ほら前向けよ!!撮るぜ〜!!」


振り返れないから状況は分からないけれど、美春がこちらを向いて笑っていた。




「はーい!!撮りま〜す!!はい、チーズ♪」



ギリギリまでそんなやり取りを続けられ、自分がどんな顔をしていたのかさえ分からない。


「チーズかよ!!何かひねれよ〜!!」



そんな事を龍雅が言っているけれど、きっと龍雅なりに私を笑わそうとしたのかもしれない。


そして、慶兄も瑠衣斗も。



「お前の頭ん中慶兄にひねってもらえ」


「ひでえ!!俊ちゃん冷たいっ!!」