いちえ




傷口に塩を擦り込むように、ズキズキと胸が痛かった。


何かが溢れ出しそうで、それを必死にこらえればこらえる程、涙が止まらない。



これは何だろう。

溢れ出しそうなモノは、何なんだろう。



感情の出し方の上手くない私には、表しようのないモノだ。



「あーあ。美春もボロボロじゃねえか」



そう言いながらも、瑠衣斗は涙を拭いてくれる。


慶兄が、ポンポンと私の頭の上で優しく手を弾ませた。


「泣ける時に泣けよ〜」


「…ははっ、もう最悪……」



みんなの目前で泣く事なんて、初めてだ。


から笑いのように笑ってみたが、結局は泣いてるようにしか見えないだろう。


声を大にして泣ければ、きっとスッキリするんだろう。



大声を上げて誰かにすがりたい。


でも、私にはそんな事もできずにいた。



素直になるって、難しいんだ。

恋愛も、友情も、違うようで似ている。



相手に気持ちを素直に表す事が、私には難しく思えてならない。



最後の最後で美春のお母さんにトドメを刺されたようだった。


本当に……かなわないよ。



瞼が重いが、しっかりと顔を上げた。


「ありがとう…もう大丈夫」



純白のドレスがやたらと目にしみるようで、視界がぼやける。


美春の涙が、とても綺麗だった。