いちえ




そう言いながらも、どう見ても納得なんてしていないだろう。


「本当に、根本的には素直じゃないねえ?」



そんな事、言われなくても分かってるよ!!


…とは言えずに、グッと言葉に詰まる。


誰だって、思った事を素直に言えたら、悩んだりなんてしない。


でもそれは、言える事と言えない事、言いにくい事だってある訳で…。



「どうしたんだよ」



向かい合っていた体勢から、瑠衣斗が距離を縮める。


近くなった瑠衣斗の顔が間近に迫り、私の顔を覗き込む。



キラリと光る色素の薄い瞳に、飲み込まれてしまいそうになり、思わず魅入ってしまいそうになってしまう。


「どうもしてない…」



恨めしげに言う私を、瑠衣斗がふわりと笑って見つめる。


八重歯を覗かせた笑顔に、私はノックアウト寸前だ。



「とりあえず、布団ねえよ」



「え!!また!?」



話が方向転換した事で、少しだけ安堵する。


こういった瑠衣斗の優しさに、やっぱり私は甘えすぎなんだろうな。


分かりにくいけれど、またこうして察して、話を逸らしてくれたのだろう。



「向こうで寝る?」



やけに艶っぽいその言い方に、今度こそ顔が赤くなる。


口元だけを上げて笑う瑠衣斗に、返答に困ってしまう。


「あ…えっと…」



明日には美春達が来る訳だし…部屋が違ったら、龍雅にまた恥ずかしい事言われちゃいそうだし…。


そんな事を考えてしまう私は、やっぱり考えすぎなのかな?



うまい言葉が出ない私を見て、瑠衣斗が私の頭をポンポンと撫でる。


「大丈夫。龍雅には違う部屋で寝ろって言われたから」


…うん…そーゆう問題でもない気もしないんだけどな……。