「はあ……疲れた…」
咽せてしまいそうな程の立ち上る湯気に、目の前に霧がかかったように景色を隠す。
今日はまた、大きな露天風呂を独り占めさせてもらい、のびのびと体を解している。
濡れた場所に外気が当たると、そこだけを冷やしていく。
見上げた夜空には、今日も大きなお月様と、粉々にしたような星屑が瞬く。
1人になると、いろいろと考えてしまってキリがないけれど、こんなに綺麗な風景を目の前にすると、何だか自分がちっぽけに感じてしまう。
何だかこうして1人になってみると、未だに瑠衣斗と付き合っていると言う事実が、不思議に感じる。
恋なんて自分には関係ないと思っていた。
ましてや恋愛なんて、無縁だと思っていた。
昨日の出来事を思い出すと、胸が雑巾絞りでもしているように、ギュッと縮まる。
まだまだ知らない事の方が多い、2人の関係。
あれ以上の事があったら、私どうなっちゃうんだろう………。
そんな自分の考えに、1人恥ずかしくなり慌てて打ち消す。
いやっ!!何考えてんの私!!恥ずかしい!!
一つ大きく息を吸って、気持ちを落ち着かせる。
明日は、慶兄も、美春も俊ちゃんもやって来る。
理由のない不安感と、期待感。
もんもんと考えていても、仕方がない。
少し逆上せてきた感覚に、私は湯船から上がった。
人の心なんて、他の人には分からない。
ありのままの自分で居る事こそ、みんなに対する礼儀なのかもしれない。

