「ほら隼人〜。パパが寂しがるから帰るよ〜?」
私に抱き付いたままの隼人君に、瑠衣斗の隣に並んだ由良さんがそう声を掛ける。
でも、一向に離れようとしたい隼人君は、終いには頭を横に振りだしてしまった。
ギュウギュウ小さな手で握り込み、隼人君が私の胸に顔を埋める。
「隼人、ももちゃんとはまた遊べるから、今日はもう帰るよ」
「やぁだぁ…」
意地でも離れないとでも言うように、隼人君は顔すら上げようとはしない。
引き剥がすのも何だか気が引けてしまうし、苦笑いをして隼人君の背中をさする。
力の緩まない隼人君の手が、私を離そうともしない。
そんな隼人君に、胸がポカポカと暖かくなっていく。
「隼人、さっきバイバイしたのに、急にどうしたんだよ」
隼人君の頭を撫でながら言う瑠衣斗の言葉でさえも、頭を横に振りだしてしまう。
何だか嬉しくて、隼人君を抱きしめながら耳元に顔を寄せた。
「隼人君?パパとママが居なくなっちゃったら、隼人君嫌でしょう?」
「うん」
「だったら、パパとママも同じだよ。隼人君が居ないだけで、パパとママ寂しいと思わない?」
私の言葉に、ようやくゆっくりと顔を上げた隼人君が、眉をハの字にして私を見つめる。
私にも、こんな時代があったのかと思うと、少しだけ胸が切なくなる。
記憶にはないけれど、私も両親が居なくなったら嫌だと、そう思ったのだろうか。
困ったなあ…こんな顔まで、るぅにソックリだ。
「ももは?ももだいじょーぶ?」
「え、私?」
予想外の言葉に、私は一瞬目を見開く。
まるで心の中を見透かしてしまわれてしまいそうな瞳に、思考をストップさせた。

