「まさかなぁ〜るぅがなぁ〜こんなんなっちゃうとはなぁ〜」
「ま、長年の片思いがようやく成就したから、仕方ないだろう」
龍雅の言葉に賛同するように、宗太がポツリと言う。
2人とも、先ほどまでいろいろな人達にお酌されていたせいか、ほんのりと頬を赤く染めている。
会話から憶測すると、やっぱり龍雅も知ってるのね……。
そう思えば思うほど、様々な記憶が蘇ってくるようだ。
『どこに向かってんのかも、自分が行くべき場所も、分かんねーんだろ』
そんな龍雅の言葉が、今でも鮮明に思い出す事ができる。
私はもう、迷子じゃない。
自分の向かうべき場所へ、気持ちはちゃんと向いている。
でもやっぱり、その遠回りがあったからこそ、今があるんだよね。
「こんな瑠衣、見た事ないよねえ」
「ねえ由良、デジカメないのデジカメ!!」
「ないわよ〜。てゆーか、まだ家に居るんだから、いつでも写真撮れるじゃん」
由良さんとおばさんの言葉に、思わず唇をきつく結んだ。
私からすれば、瑠衣斗は彼氏になる訳で、そうするとおばさんは彼氏のお母さんで…由良さんも瑠衣斗のお姉さんで…おじさんは……。
そう意識しだすと、思うように言葉も出てこない。
無駄に焦れば焦る程、何の反応すらできなくなってしまう。
「パパ持ってきてたりする♪」
「え!!パパたまには役に立つじゃない〜!!」
「え…た、たまに?」
耳に入ってくるそんなやり取りでさえ、私にはどうすればいいのかなんて分からない。
曖昧な微笑みを浮かべ、内心ドギマギしながら成り行きを見守るしかなかった。

