いちえ





うわぁ…るぅ怒ってる……。


そう思いながらも、私はチラリと龍雅と宗太に目を向ける。


何やら由良さんや、るぅの両親達とニヤニヤと笑いながらこちらを見つめて話をしている。



龍雅の、「やっと」と言う言葉が、何だかやたらと気になって仕方がない。



宗太にはバレてるってるぅは言ってたけど…他のみんなってどうなんだろう。


ん?もしかして美春も??



「おい瑠衣〜。久しぶりだなあ。何だお前、お酌くらいできねえのか!!」



「いーっつも1日で戻りやがって。ま、その理由もやっと分かったけどよ〜」



いつの間にか瑠衣斗に掛けられる声が、大きな物へと成長する。


それぞれ話したい事だって、たくさんあるはず。


いつもすぐに地元から帰ってきてしまう瑠衣斗と、こうして地元で集まって、みんなと話す機会だってなかった事は簡単に予想がつく。



何だかいかにもな集団は、きっと瑠衣斗の地元の仲間なのだろう。


大輔さんを筆頭に、口々ににみんなが般若の瑠衣斗をからかう様子に、自然と笑みが漏れた。



「おーいもも〜」



宗太の声に再び視線を戻すと、私に向かって宗太が手招きしている。


せっかくこうして、地元の仲間とゆっくり話せる機会だし、ここは宗太の所に行っておこう。


そう判断した私は、そっと瑠衣斗の腕から抜け出し、背中を押した。


「ちょ…もも?」



「せっかくなんだから、みんなとゆっくり話してなよ」



「ま…っおい!!いてっ」



そんな私の言葉に、分かりやすく反応した瑠衣斗が口を開けかけた時には、瑠衣斗の体はグッと前屈みになる。



「お前はひっつき虫かー!!」



みんなに羽交い締めにされ、バシバシと叩かれている瑠衣斗の背中を見送りながら、私は宗太達の元へと向かった。