いちえ




何となく意味の分かった私は、今までにない程顔が熱くなる。


この状況で、気付かない程私だってバカではない。


涙なんてとっくに引っ込んでしまい、グッと肩に力が入る。


何か言おうにも、口が縫われてしまったかのように開かれない。


「もう十分過ぎる程、我慢させられてんだけど?」



我慢!?我慢って何を!?


グイッと体を引き寄せられ、慌てて顔を瑠衣斗の肩に埋める。


有り得ない程暴れる心臓に、こめかみにまで鼓動が伝わる。


目の前がチカチカして、気を失いそう……。



「聞いてんのか」



背中から着ていた物をめくり上げられ、背中が露わになる。


触れられるたびに、体がピクリと反応し、そのたびに恥ずかしさに目を固く瞑る。


ふるふると横に頭を振ってみても、クスクスと瑠衣斗が笑うだけだ。


「俺が考えてる事…全部教えてやろうか?」



耳に唇が触れ、ダイレクトに囁かれる。

掠れた瑠衣斗の声に、頭の中が痺れるようだ。



どうしようどうしよう。どうしたらいいんだろう。


パニック寸前になりそうな自分を、落ち着かせようにもそんな術は思い付かず、ガチガチに固まるしかない。


そうしてるうちにも、瑠衣斗の手が迷いなく背中をなぞる。



耳に触れていた唇が、私の耳朶を甘噛みし、優しく舌と唇で転がす。


「んっ…」



甘い痺れに、首を竦めようとした私を、後頭部に回した片手により阻止してしまう。



「もも…聞きたい?」



囁かれる声すら、私に甘い痺れをもたらす。


フッと肩から力が抜けた瞬間、胸の締め付けがなくなった。