いちえ




「思い出した?」



今目の前に居る瑠衣斗は、優しく私を見つめている。


涙の筋なんて、どこにも見当たらない。


「私…るぅのせいで泣き虫になった…」


「やっとももが泣いた時は、嬉しすぎて本気で理性もぶっ飛んだ」


「ちょ…!!な、なに…それ」


「初めて俺の前で泣いたから。ももは覚えてもなかったけど、俺ん中では…て事」



簡単にまとめられて、何だか少し納得がいかないけれど。


でも、思い出せた私の記憶と、瑠衣斗との約束。


「約束…って言うのもちょっとおかしいかもだけどな。でも、俺の中ではももに対する約束かな」


「じゃあ…また約束してくれたんだよね…?」


「したじゃねーか。今」



ずっと傍にいる。るぅは居なくなったりしない。


失う事が何よりも怖い私には、本当に何よりも嬉しい。


目頭が熱くなった気がして、瑠衣斗から視線を逸らした。


頬を優しく包み込むような手の温もりが、私の伏せられた瞼を優しく撫でる。


やっぱりるぅは、魔法使いだね。


瞼から零れ落ちる涙を、瑠衣斗が口付けるようにして瞼に何度も着地する。


何度も何度も、優しく触れる唇に、私は瑠衣斗の背中に腕を回した。



「これからは、いろんな意味で鳴いてもらうけどな」


「……泣いてもらう?」


「泣く…じゃなくて……」



瑠衣斗は私と視線を合わせると、意味深にいやらしく微笑む。

何だかやたら妖艶で、見とれてしまう。


「俺に“鳴かされる”かな?」


「……鳴かさ………!?」