いちえ




まだ聞きたい事があった筈なのに、何だかもうお腹いっぱいで、もう十分という気分だ。


優しく頭を何度も撫でてくれている手の温もりと、体を包み込む瑠衣斗の体温が、これは夢なんじゃないかとすら思えてしまう。


「るぅの考えてる事って?なに?」


「そこ聞くか?」



るぅの感じている事、思っている事、見ている物、全て知りたい。


ただでさえ私には、るぅの考えている事なんて分からないのに。



「だって、私にはるぅは分かりにくいから」


「どーせ宗太辺りが俺は分かりやすいとか言ってんだろう」


「すごい!!何で分かったの?」


「……バレてる。俺がずーっとももを好きな事」



パッと顔を肩から離すと、それに気付いた瑠衣斗が少しだけ体の距離を空けてくれる。


じっと瑠衣斗の顔を見つめ、私は躊躇する事なく口を開いた。



「ずーっとって?」


「…………」


「ねえ、ずーっとって?」



見つめた瑠衣斗の顔が、段々と赤く染まる。


その表情は、何か苦虫でも噛んでしまったような、何とも言えない表情だ。



「…言わねえよ」



フッと視線を外されたものの、その顔は耳まで赤い。


部屋が薄暗いせいか、遠慮なくそんな瑠衣斗を観察できる。



「ね、考えてる事って?」


「…ここで話を戻すか?」


「聞きたい事いっぱいあるんだもん」



不思議。気持ちが同じって知ってから、気持ちを言葉にする事がこんなに楽だ。


慶兄って、やっぱり私のスーパーマンみたい。