いちえ




「えぇ〜そっかぁ…じゃ好きな人は?居ないの?」


……え。



「………はい?」


「好きな人♪」


ワクワクするように、可愛らしく言う由良さんに吊られ、思わず、います。なんて答えてしまいそうになりとどまった。



バカ正直に答えたらどうなるか、予想しなくても分かる。


だいたい、役者が揃いすぎている。


「なっ…内緒……です」



………ど、どうしよう。


るぅがこっち見てる。



顔が熱いのが分かる程、それ以上に体が熱い。


ぱぁっと表情を明るくした由良さんは、内緒を肯定に捉えてしまったんじゃないかと不安に思う。


「うふ。そっかー、今度2人でお話ししようね」


「あっ、はい」




多分だけど、何となく私の気持ちを察してくれた気がした。


だから由良さんは、そう言ってくれたのだろう。



「ももの話はいいんですおねいさん!!おねいさんは彼氏居るんですか!?」


「え?私?」



龍雅の言葉に、ホッと胸を撫で下ろす。


いつもなら、ちょっとカチンときているだろうけど、今回は助け船を出してくれたように思え、龍雅に感謝すらしたい。



宗太は呆れた眼差しを龍雅に向けるが、瑠衣斗の顔は見れなかった。


「私結婚してるよ。3歳になる子供も居るし」


「……えっ」


「あ〜あ。龍雅振られたなあ」



瑠衣斗から、少しだけ話は聞いてはいたが、結婚してて更にお子さんまで居るとは……。


龍雅に負けないくらい、きっと私も驚いた顔をしていると思う。



「えー!?こっ、お子さんまで居るんすかー!?」


「美人ママさんですね〜」


「やーだー照れる〜♪」



龍雅とは対照的な宗太は、のんびりとそう言うと瑠衣斗に目を向けた。


「るぅは何も言わねーし」



含み笑いのような顔で、宗太が瑠衣斗にそう言う。


チラリと瑠衣斗に視線を向けると、何だかばつが悪そうにテーブルに肘をつき、手で口元を隠すように顔を乗せた。


すると、ポツリと私にだけ聞こえるような声で、瑠衣斗が呟いた。


「…帰りてえ」