いちえ




「へえぇ?なになっ…う」


「もも!!待て!!」



はっ!?待てってなに!!!!



そう言いたいのに、唇をベロベロと舐められていて口を開ける事ができない。


おまけに、馬乗りにされていて、何とも無残な光景だろう。


その時、お屋敷の方から女の人の叫ぶ声がして、顔を向け……れなかった。



「瑠衣斗〜!!あんた着く前に連絡くらい入れなさいよー!!だいたい何時ぐらいに着くとか電話の一本も入れれないの!?」


「はいはい。すんません」



声が若いので、お母さんではないと思った。


それより、とりあえず何とかして欲しいんですが。


「あっ、コラ!!もも!!どきなさい!!」


いやっ、あの…私が乗られてるんですが……。



「ほらもも、おいで」



瑠衣斗が何とか引き剥がしてくれて、やっとの思いで体を起こした。


……どゆ事??



ぽかんとした私に近付き、背中を払ってくれる女性と目が合った。


「ごめんなさいね〜。この子いつもは大人しいんだけど」


「……ど、どうも初めまして…」


目の前でニッコリと笑うこの人は、驚く程の美人だ。


そして、



「初めまして。瑠衣斗の姉です」


やっぱり。目元や鼻、唇が瑠衣斗に似ていて、瑠衣斗にはないどこかふわんとした雰囲気だ。


「姉貴、話してた友達」



そんな瑠衣斗の声を合図に、みとれていた意識を覚醒させた。


「あ、はっ初めまして。唯ノ瀬ももです」


「え?もも?この子も同じももって名前なんだよ」



…えっ、この子って、この大きな馬乗りにされたワンチャン……。


……へえ〜……。