いちえ




「あ〜…ついに来ちまった…」



ハンドルにもたれかかるようにして、何とも言い難い表情で家を見上げる瑠衣斗に、言葉が出なかった。


……お屋敷だ…。



「ここ…るぅんち?」


「……俺以外誰がいんだよ」



宗太のびっくりしている顔が想像できる。


だって、私も物凄く驚いてるもん。


「うーわー。すっげえ坊ちゃんだったのか」


「嫌味にしか聞こえねー。田舎の家はどこもでかいんだよ」


龍雅の返事を待たずに、瑠衣斗は車のエンジンを切った。


思わず目で追うと、ばっちりと目があってしまう。


「…降りろよ」


怪訝な顔をしながらも、何だか恥ずかしそうな瑠衣斗に、コクリと頷いておいた。


純和風な造りの家は、周りを背の低い木が囲うようにして植えられている。


中庭があるようで、立派な松の木なんかがあったりする。


母家に並ぶように、小屋のような家が並んでいる。


小屋とは言えないような、立派なものだけども。



いそいそと車を降りた私は、お屋敷から飛び出してきた物に、全く気が付かなかった。



荷物を取ろうと車の後ろへと行こうと、足を踏み出した。


その瞬間、思い切り何かが背中に向けて体当たりしてきたのだ。


「うわぁぁっ」


えぇ〜!?なにー!?



まともに喰らった私は、いとも簡単に吹き飛んだのだった。