いちえ




のんびりとした街並みに、思わず目が奪われる。


キラキラと輝きながら流れる川は、近くで見たらもっと綺麗だろう。


「すごい……綺麗」



ぽつりと口をついて出た自分の言葉に、自分が景色に見とれていた事に気付く。


ぼーっとしていたせいで、周りの声が突然耳に入ってくるようだ。


「もう着くぞ〜」


「うおー長かったあ!!!!」



今にも飛び出して行ってしまいそうな龍雅を乗せ、車は中心部をそれて裏道へと入った。


似たような家が連なり、その間を少し抜けると大きな鳥居が現れた。


「立派なお寺?だね」


「ん?あぁ〜神社だよ」



鳥居の先は、木々が本堂を隠すように覆っていて、先が見えない。

でも、木々の間からは、大きな屋根が顔を出していた。


周りは田んぼや畑に囲まれ、神社の左右に家が点々と少しある程度だ。


田んぼや畑を境に、そこにはまた違った景色が広がっていた。


田んぼの間を抜けるように伸びた道を進み、鳥居の正面で瑠衣斗は車を左折した。


少し進むと、すぐ神社の隣の大きなお屋敷のような家に、瑠衣斗は滑るように躊躇もなく入った。



まさかとは思ったが、間違いなさそうだ。


どうしよう。息苦しいくらい心臓が暴れだしてきちゃった。



「はい〜到着〜」



スピードが落ち、ブレーキをかけギアをパーキングに入れたと同時に、瑠衣斗が一言そう言った。



多分きっと、瑠衣斗以外の全員が同じ事を思ったに違いない。



「……でかい」


目の前に広がる景色に、きっと目が点になっていると思う。