一哉はボールを強く握ると、地面をつま先で蹴りながら苦笑した。

「会わないって言ったのは、君がどう生きるのか、こっそり見たくなったんだ。僕に見られているんだなぁと考えながら生きるってのもいやでしょ? ってのは、どう?」

「へぇ。そうなんだ。本当に?」

 鏡が空を見上げた。一哉もつられて空を見た。

 真っ白な飛行機雲が、まっすぐに伸びていた。

「ふぁぁ~、ほんとは生きていて欲しいと本気で思ったからかな、あぁ~、でも照れくさくて、ふわっ~あぁぁ」

 一哉はわざとらしい欠伸をしながら言った。

「あはっ。ふふふっ。あはっ。はははははっ。ふふ。あーっははははは」

 鏡は腹を抱えると、本当に愉快な冗談を聞いたように笑って言った。

「くっさいよぉ。でもさ、ありがと。嬉しいよ、本当に」

 その目の端は、濡れて煌いている。