一哉は落ちて来たボールをつかんで言った。

「怒ってる?」

「よっこらしょ」

 鏡は年寄りのように自分の腰を叩きながら立ち上がると、笑って言った。

「怒ってるよ。とっても。どうして助けたの。ずいぶん腹が立った。空中で静止している状態ってのはかなり貴重な体験だったけれどさ。それはいいの。もう会わないなんてそっちのほうがむかついた。でも君のこと見えてしまっている。残念だったね」

「霊能者さんでもなかなか見れないぐらい存在レベルを下げているのに。呆れるぐらい鋭いね。山郡さんだって気づかないよ?」

「そんなに褒めないでよ」

 鏡の笑みが、いたずらっぽいものに変わった。