鏡は手を広げたまま、何もない後方に向かって体を倒した。

「私の結論」

 自分を捨てるような動きだった。

「ばいばい」

 本当に微かな間が空いたあと、恵の叫び声が張り詰めた空気を揺らした。

「いやぁ。駄目ぇ!」

 一哉は見つめた。

 鏡が落ちるのを、しっかりと、自分の目で。

 思い出していた。

 二十年前、同じ理由、同じやり方で、自分もこの場所から飛び降りた時のことを。

 止める人は居なかった。