事件は消された。

 正確に言えば、少年たちのことだけが消された。

 恵が救急車を呼んだ。

 匿名で。

 ベテランの救急隊員たちは、体育倉庫に居る少年たちを見て息を止めた。

 少年たちが、血だまりの中で倒れているのだ。
 
「だんごむし、だんごむし」
 
 ピアスは体を丸め震えながら呟くだけで、まともに話ができる状況ではなかった。

 一哉は少年たちが救急車に運ばれる様子を、銀色の目で、最後まで見つめた。