虹色の世界だった。

 周囲の色はカラフルで、一哉はまぶしさを感じた。

 これは夢。

 一哉には分かっている。

 何度も見て来た夢だ。
 
 足元には石畳があり、その両側には、服屋や、雑貨屋や、レストランが並んでいる。

 ただ、足の裏から伝わって来るのは石の感触ではない。

 一哉は試しにジャンプをした。

 着地すると、確かに踏み応えは固い。

 だが歩くと柔らかい。

 一哉はいつもと変わらない夢に安心し、歩き始めた。

 そうすると、鼻先に、砂糖の焼ける匂いが香った。

 どこかでワッフルでも作っているのだろうか。

 一哉は並んだ建物に顔を向け、匂いの元がある店を探したが見つからなかった。

 そのうち、空気が湿って来た。