「さぼって家にいた。読んでいたのはサリンジャー。ライ麦畑で捕まった。って、あれ? 捕まえるぞまてこの野郎だっけ。それ読んでたら、君に会いたくなって学校に来た。そしたら、君が一人でつまんない遊びしているのを見つけた。遠くから見ても近くで見てもつまんない印象は変わらない。つまんないでしょ?」

 鏡が体育座りをした。ジーパンが汚れるのは、気にならないらしい。

 一哉はあえて注意しなかった。

 鏡なら、服は汚れるためにあると言い返しかねない。
 
 代わりに、腕に、腰に、足に、肩に力を入れ、空に向かっておもいっきりボールを投げた。

 そう。

 鏡と出会ったのは、一ヶ月前だった。